香りの散歩道


柊鰯

墨絵・朝野泰昌
今日から二月。
この世のあらゆる「わざわい」を思いっきり追い払う、節分の日が近づいてきました。

自然災害の「災(さい)」という漢字と、コロナ禍の「禍(か)」という字。
どちらも「わざわい」と読むのですが、これらすべてを鬼に見立てて、退治したいですね。

はるか昔から、ニオイも鬼退治にひと役かっています。
まずは、豆まきに使う大豆を炒るときの香ばしいニオイ。
人間にとっては、美味しそうな香りでもあるのですが、どうやら鬼は苦手なようです。

そして、キザキザの葉っぱがある柊の小枝に、焼いた鰯の頭を突き刺した、「柊鰯(ひいらぎいわし)」の強烈なニオイ。
これを戸口に飾っておくと、鬼が近づけないと言われています。

一説によると、鬼が鰯の香ばしいニオイに誘われて、近づいてきたところを、柊のトゲで退治する・・・という、
まったく逆の言い伝えもあるそうですよ。

柊鰯を飾る風習は、千年以上も前からありました。
そのことを記した一文が、平安時代の歌人、紀貫之(きのつらゆき)の『土佐日記(とさにっき)』に見られます。
ただし、当時は鰯ではなく鯔(ぼら)の頭を柊に刺していたとか。

それが、いつしか鰯に変わって、この風習は庶民の間にも広まっていきました。
豆や鰯のニオイの力も借りて、皆さまどうぞ、盛大に鬼退治をしてくださいね。

*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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